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いのちを語る⑳人間回復への闘い
 昭和37年9月14日、こうしてBさんは死刑台の露と消されたのです。人間として扱われること無くボロギレのように扱われて無念の死を遂げたのです。
 ハンセン病患者、元患者の方々は、偏見と差別の為に一人の人間として生きることさえ許されなかったのです。だから、私も敢えて「人間回復への闘い」と言うのです。
 隔離された療養所の中で生きる希望の一つが愛する人と出会い支えあって生きていくことでした。
 菊池恵楓園のEさんは60代半ばの女性です。小学生のときに発病して入所、プロミンを注射したところ忽ち完治したそうです。後遺症は手の指先がほんの少しだけ曲がっている程度で殆ど気がつかない程度です。しかし、「らい予防法」には退所規定がありませんので故郷へ帰ることは許されませんでした。
 療養所の中で勉強し、高校は岡山の長島愛生園の中の高校へ行き卒業後、再び菊池恵楓園に帰ってきたそうです。そして、21歳の時に愛する人と巡り合い結婚、そして妊娠。普通の夫婦であれば当然の喜びを分かち合う出来事ですが、園内で出産することは許されませんでした。
 Eさんは「産むことは許されないと分かっていましたが、ひとりの女性として『妊娠』という体験をしてみたかったのです。一日でも長く愛する人との間にいただいた小さな命をお腹の中で育てたかった」と話してくれました。
 そして、4ヶ月目に入る前に園長先生から呼ばれて堕胎を勧められました。誰もがそうしていましたから当然のことと受け止めて手術台の上に上ったそうです。麻酔が切れて看護婦長さんから「今、赤ちゃんが下りましたよ」と言われた時に自分のお腹に宿った小さな命を奪ってしまったことの罪と悲しみで涙が溢れ泣き続けたそうです。
 らい予防法と優生保護法は、ハンセン病者、元患者に対して出産を許さなかったのです。
遺伝もしない、感染も極めてしにくい、感染しても発病する人はまれであり。薬で直ぐに治るようになったのにも関らず、避妊手術、断種手術、堕胎手術が当然の如く行われたのです。
 Eさんは「あの子が生まれてきていたら40代半ばになりますからそれくらいのお父さんやお母さんをみると『こんな立派なお父さんに、或いは、お母さんになっていたかもしれない。こんな可愛い孫ができていたかも知れない』とまた涙が出てくるんです」と話してくださいまし
た。
 国のハンセン病政策は、ひとりの女性として、母親として生きる権利さえ奪ったのです。
 先頃、表面化した「胎児標本」の問題は、堕胎させた胎児の体をホルマリン漬けにして標本として保管していたものです。人間として許される行為ではないと思います。
 人間回復への闘いはまだまだ続きます。
 
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【2007/02/22 17:48】 | ハンセン病 | トラックバック(0) | コメント(0)
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プロフィール

藤井慶峰(ふじい けいほう)

Author:藤井慶峰(ふじい けいほう)
1954(昭和29)年5月、宇土市生まれ。
 ペットは愛犬レオとルナ(10年前に捨てられていた雑種犬ですが気が利く我が家の番犬です。レオはオスで門番をしています。お参りの人や用があって来た人は笑顔で迎えますが、怪しい人には吠えます。但し、夜は見知らぬ人には吠えますのでご注意。(噛みはしません)八幡大学第2部法律学科卒業、法泉寺26世住職 大本山総持寺布教師 曹洞宗九州管区教化センター布教師 九州四十九院薬師霊場会理事 熊本市人権啓発推進総室講師 保護司 熊本刑務所教誨師 平成義塾熊本前塾長 ハンセン病市民学会宗教部会世話人 人権啓発映画「新あつい壁」製作上映実行委員会事務局世話人  環境ネットワーク熊本会員 宇土の文化を考える市民の会世話人 不知火竜馬会会員 自殺防止ネットワーク風熊本相談所 
 宇土市議会議員(3期目)

(好きな言葉)希望は高く頭は低く   実るほど頭の下がる稲穂かな    身を削り 人に尽くさん すりこぎの その味知れる 人ぞ尊し
(尊敬する人)お釈迦様  マハトマ・ガンジー  横井小楠  坂本竜馬  吉田松陰 田中正造 西郷隆盛 小松帯刀 天璋院篤姫
(著書)美しい地球と未来を子供たちに ㈱ぱんたか刊 1300円 この本を送料・税込み1000円で差し上げます。

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